ウィークエンドシューターがフォートナイトで上位1%に入るための方法と狂人のためのライフハック
僕はストレスを溜めていた。
ここのところ偏頭痛が酷く、自らで打ちたてた目標である私小説の執筆も難航しており、仕事は忙しく、平日の睡眠は3時間も取れていない状態が長く続いていた。
その日も寝不足のまま、ボーっとした頭で出勤するために靴を履いていると、歯を磨いていた妻がトットッと玄関へ見送りに来た。
「あ、あたし今日からだから」
「え?なんだっけ?」
妻は歯ブラシを咥えたまま喋っていたので実際にはフガフガと溺れている様な音が鳴っただけだったが、僕と妻の長年の付き合いはそのような不明瞭な音でも簡単な意思疎通を可能なものにしていた。
「言ったじゃん。旅行いくって」
「あー」
そうだった。妻の高校時代からの友人がフランスかなんかそのあたりのかっこいい外国から一時帰国するとのことで仲のいい友人数人で旅行すると言っていた。
「わかった。気をつけてね」
「うん」
僕は玄関のドアを閉めるとトボトボと車へ向かった。
妻はとんでもないおしゃべりでさらに話の内容もおもしろくない。しかし、僕は彼女が内容のない話を楽しそうに話しているのを見るのが好きなので、数日間でも彼女のいない生活を想像すると暗い気持ちになった。
何かいいことないかなぁ。
僕は車のエンジンを掛けながらそう思った。
例えば僕が今、一番欲しいものはなんだろうか。多分時間だ。ゆっくり寝たいしゲームもしたい。一人で意味もなく海岸沿いを散歩したりしたい。 そうだ。ゆっくりと考えをまとめる時間が僕には必要だ。
さらに言うならハンバーガーやフライドチキン、ピザなどのジャンクフードをテーブルいっぱいに広げて怠惰パーティーを開きたい。このパーティの招待状は僕だけにしか届かない。テレビは何か希望に満ちた子供用の3Dアニメ映画を流して、僕はソファに座ってテレビだけが明るい薄暗い部屋でコーラを飲むのだ。
いい。とてもいい。
しかし、ゲームはどうする?フォートナイトをしなくてはならない 。
寝室のテレビをリビングまで持って来よう。3Dアニメ映画などそもそも興味ないので垂れ流しでいいのだ。レストランのクラシックのようにBGMになってくれればいい。要は賑やかしだ。
そうだ。この際ゲーム用のPCとモニターを買ってこよう。
pingをよくするためにルータとカテゴリ7のLANケーブルも買い換えよう。
いいぞ。とっても楽しい。
はっ!?
そして僕は気付いた。
そんなことができるはずがない。なぜか?妻が怒るからだ。
そう、僕は気付いてしまったのだ。
しかし、今日から数日間は妻がいない。つまり、できるのだ、と。
僕の脳みそが久々に高速回転し始めた。
しなければならないことがたくさんある。
まずは。
僕は秒でインフルエンザに罹患した。
本来はウイルスが僕の体内で悪さをしださなければインフルエンザに罹患することはできないが、今回の場合、その存在の有無は問わない。とにかく僕がインフルエンザウイルスに侵されたということを事実だとと認識することが大事なのである。
こうなると仕事は休まなければならないのだが、僕が休むことで周りに多大な負担をかけてしまうことになる。これを少しでも軽減するため、僕は最も信頼できるいつもの後輩に今週の最低防衛線と業務上の要点だけを書いてラインした。彼からすぐに「?」のスタンプが返ってきたので「つまりそういうことです」と返信した。 ため息をつくスタンプが返ってきたことを確認して、彼が全て察したと理解した。
その後、上司へ連絡し、熱があることを伝えた。
僕からその名や雰囲気を出すことなく、「インフルエンザが流行ってるから病院いっとけよ」と言質をとることに成功した。そして抜け目なく後輩に細かい業務指示を出したこと伝えた。後は午後にでももう一度電話をすればよい。
さて、こうなるとこれから始まるパーティナイトを満喫するためにここ数週間の寝不足による脳の損傷が心配だ。
睡眠が必要である。マントルのさらに先、星の重力から開放されて核空間で眠るような深層なる回復が。
朝早くから開いている大型のディスカウントストアから自宅に戻ると妻は既に出発したようだった。
あったかくなるアイマスクや安眠できるという枕など、手当たり次第に買ってきたそれらを、順次装備し昼過ぎにアラームをセットして布団に潜った。
次に目覚めたのは夕方だった。
目を開けた瞬間にここ5年で1番身体の調子が良いことを確信した。
スマホに着歴が残っていなかったので仕事の方も順調なのだろう。こちらもこれから色々と忙しいので職場への連絡は明日することにした。
冬ももうすぐ明けるのだろう。陽はまだ残っている。光を反射して陰影のついた赤黒い雲が所々、空に浮かんでいる。僕は子供の頃に秘密基地へ向う時のようにワクワクしていた。
さて、物資の再補給が必要である。我々の夜は長い。もちろん我々と言っても僕しかここにはいないので、ここで指す我々とは今日という夜を楽しもうとしている世界中のパーリーピーポーの同志達のことを意味する。さあ、夜を楽しむのだ。
大切な事がいくつかある。
例えば世界が何で出来ているか、という事だ。
僕は多くの物事でそれらを構成する物質のことを知らない。しかし、僕の目線から見た世界とは全て、僕の認知によって出来ていると言ってしまえる。
僕は地球が自転していることを感じたことはないが、知識とかしてそう習ったので大体そんなものなのだろうと認識している。以前も書いたが僕の父はハゲているが父の中での自分の評価は「まだマシ、いや、寧ろおっさん界隈ではちょっとイケてる」というものである。
事実がどうであろうとそう思い、類推して行動した結果がある程度満足のいくものであれば、僕らはそれが事実であると思い込んでしまう。
認知が歪めば世界は変わる、この考えはある程度真実であると僕は思っている。つまり思い通りの世界は他人が関わらない限り簡単に作ることが出来るのだ。
しかし、他人の話を聞かず独善的な考えだけで認知を構築してしまうと必ず人は狂人となってしまう。自身の認知の破壊と創造は、深淵を覗き込む、危険な行為なのだ。
僕のパーティはそれから37時間続いた。
結果的にはその時たまたまやっていたフォートナイトのランキング戦で上位勢となり、チャンピオンシップへの挑戦権を手に入れるに至った。
それから12時間以上寝て、次の日に起きると、旅行から帰って来た妻にゲンコツされるほど怒られた。確かに妻からすると部屋はファーストフードのゴミでグチャグチャになり、見知らぬ機械が乱雑に配置され、汚れきった自分の夫がグゥグゥ寝ているのであれば気持ちはわかる。寧ろ正しいし、僕も妻のゲンコツがなければ正気に戻れなかったと思われるので感謝しかない。
この経験から僕が世界中の狂人に伝えたいことは常識的でしっかりとした気の強い妻を娶れ、ということである。
常識的な人にはストレスが溜まっても、大体のことは寝たら解決するのでタガを外そうとするな、と伝えておく。寝ても治らない場合は素直に病院に行った方が良い。
フォートナイトでチャンピオンシップに出たい人にはリスクを徹底的に除外することと、自分よりスキルが上の相手に対しては無理に戦闘せず、移動系の補助アイテムで最終盤面で有利をとってストームキルした方が強いよ、と言っておく。特に風船はぶっ壊れ性能だと思う。
平成最後の大晦日に何が生まれたのか、という話
12/30に5歳と4歳の甥っ子が実家に遊びに来ていたので会いに行ったんだけど、到着早々にイオンに連れていけと何度も言うので僕と甥っ子3人でイオンに行くことになった。
上の子の話によると兄弟で、あるポケモンのゲームにはまっているらしく、昨日、こちらのイオンにもあるのを見たそうだ。
僕としても本を買いたかったのでちょうどいいかなあと思っていた 。
イオンに着いて一緒にゲームセンターに行き、それぞれに500円ずつを渡した。
いくらしっかりしていると言っても保育園生2人をそのまま置いておく訳にもいかず、僕も2人のポケモンゲームに付き合ってしばらくその様子を眺めてた。
このゲーム、ポケモンガオーレという名前らしい。
筐体は独特の形をしているので既成枠ではないのだろう。画面を見てもアニメーションが結構しっかり作りこんであるのでメーカーとしてもまあまあ力を入れているのではないかと思われた。
ゲームの内容はランダムで現れる2匹のポケモンとバトルして最後にモンスターボールで捕まえるというもののようだ。捕まえたポケモンはガオーレディスクという厚めのプラスチックカードとして排出されるのでそれを次回以降に筐体にセットすると味方のポケモンとして召喚できるようである。
甥っ子達はゼラオラというポケモンのガオーレディスクが欲しくてプレイしているらしい。
結構値段が高くてプレイのために100円、ゲットしたポケモンのディスクを排出するならさらに100円、という値段設定がされている。
つまり1ディスク最低でも200円である。プレイしているのを見ているとポケモンは倒せたからといって必ずゲットできるわけではなく、しょぼいモンスターボールを投げてしまった場合逃げ出すこともあるようだ。
ゼラオラが何かは知らないが、狙ったポケモンが100円数枚で簡単にゲットできるような仕組みではないことはすぐに推測できた。
案の定、最初にプレイした上の子は初期モンスターっぽいポケモンのガオーレディスクを2枚しか手にいれらなかった。
「あーあゲットできなかったよ」
そう言って小さな肩を大げさに落とすものだから僕としてはここで大人の威厳を見せ付ける必要があると感じた。
「僕に任せてよ。必ずゲットしてみせるから」
任せて。してみせる。虚栄心と傲慢。僕はこの瞬間、7つの大罪の2つを同時に犯した。そしてその報いはすぐにやってきた。
「あっれ?っかしーな」
僕と甥っ子達は最初の1000円からさらに追加で1000円を投入したがゼラオラは一度も現れなかった。いや、金銭的には大した問題ではない。2000円を使い切るまでに3時間を要したことの方が僕にとっては大きな損失であった。
このポケモンガオーレは子供達に大人気であり、結構な列が出来ているので、1プレイ毎に列の最後尾に並びなおしが必要なのである。
中には1回のプレイで3戦を続けて行う不届き者もあったが、他にも子供と付き添って並んでいる大人が何人かいたのだが、誰も何も言わないので僕も注意することができなかった。
「夕方からお仕事の用事あるから本当にごめんなさいなんだけど今日はお家に帰ろう」
「えー!!まだゼラオラゲットしてないよ?」
「ゼラオラー!!」
甥っ子達は非難轟々であったが、さすがに年末の人がいない状況の仕事をすっぽかすわけにもいかないので、兄達が泊まる実家に連れ帰った 。
「兄ちゃん、いつ帰るんだっけ?」
僕は実家でテレビを見ていた兄に尋ねた。
「え?あーまだ飛行機取ってないけど多分1/4まではいようかなーと思ってるけど」
期限は1/4。渡すことを考えたら1/3までに入手しておく必要がある。そう、僕は諦めていなかった。
「それまでにまた来るわ。子供達に渡さなきゃいけないものがある」
僕はこれまで、目標の完遂に徹して生きてきた。
だからこれをブレさすことはできない。
目標を達成するために大事なことは、目標設定を見誤らないことと、多角的な視野で攻略ルートを複数検討する事だと思っている。
例えばこのブログ。僕の最大目標は自分がいいと思える記事を書くことである。だからPVも更新頻度も重要ではない。自分のペースで自分が興味のある内容を書くことが大事だと思っている。
それに何の意味があるのかはわからないが、僕が死んでもネットの海で僕の思念がテキストという形で浮遊していると思うと、それはなんか楽しい。そして僕の知らない誰かがいつかそれを読んで少しでも面白いと思ってくれるのであればそれでいい。
最大目標以外は努力目標なので適宜変更してしまって構わない。
そして、僕は色んな手法を試して完成したものについて自問自答するのだ。それって面白いの?と。
諦めなければ物語はいつまでも続く。それがいくら冗長で緩慢で退屈な物語だったとしても。必ずゼラオラをゲットしてみせる。今胸に宿ったこれは虚栄心でも、傲慢でもない。目標を達成するための情熱というエネルギーだ。
僕は早速、インターネットを使ってポケモンガオーレについて調べた。
そこで以下のことかわかった。
・きあい、という数値が出現ポケモンのレアリティに関連する。
・きあいを上げるためにはガオーレパスという別売りのカードを購入し、使用するか、毎セット毎にガオーレディスクを排出する。
・これはガオーレディスクを排出するとボーナスがつくため。
・なので継戦が基本。1ゲームは3セットまで継戦可能。
・3セット目までにきあいを380以上に上げておけばかなり高い確率でレアポケモンが出てくる。
・レアポケモンや、属性効果を使えば大体のポケモンはワンパン余裕。つまり戦闘自体は難しくない。
・あとは大体確率。運任せ。
なるほど。複数回プレイが基本だったようだ。
ガオーレパスは店舗で購入するとして、あの回転率の悪さが問題である。
僕はすぐにガオーレの設置店を検索して、人の少なそうな店舗を見繕った。
問題は大人1人でガオーレを攻略することが緩やかな社会的自殺になり得るか、ということだが、これについてはいい。そう言った意味では僕はもう死んでいる。
1/1以降はお年玉効果でたくさんの子供達に占領されることが予想されるので、できれば31日までにゲットしておきたい。つまり明日。平成最後の大晦日、為すべきことは決まった。
翌日、僕は9時にはイオンに向かった。結局、開店時間が早い方をとった。時間効率を考えれば別の店舗を優先すべきだが機会損失は避けたかった。
いくら戦闘が難しくないと言っても僕は昨日手に入れたガオーレディスクを全て甥っ子に渡していたので、持ちポケモンがなかったのだ。この場合、こちらのポケモンはランダムで選ばれることになるのだが、おそらくランダムポケモンでゼラオラをゲットできるほどぬるい設定にはなっていないだろう。いや、なっていてもらっては困る。
僕は今日、ポケモンガオーレという子供用のアーケードゲームにガチで挑もうとしているのだ。ならばそれは相応の高さの壁であって欲しいというのが人の心だと思う。
僕はガオーレパスを購入して早速、ゲームセンターへ向かった。子供の姿はなかったが1人先客がいた。
大の大人が1人、ガオーレをプレイしていた。
僕としてはもう覚悟を決めてきているので、迷わずその彼の後ろに並んだ。
見たところ、大学生か、もう少し上、というところだろうか。ガオーレパスも持っているし、ディスクを入れている箱や、プレイ画面のポケモンもでんせつ、とかスペシャルと表示されているので、おそらくガチ勢なのだろう。
きあいを素早く上げるため、戦闘中に連打をしなければならないのだが、なんというか、両手でタタンタンッとしなやかに軽く、しかしかなりの符割で叩いている。多分彼は本物である。ガオーレ界の本物を見たことはないが多分彼がそうなのだと瞬時に理解させる程にはオーラが出ていた。
自分より優れたものがいると、嫉妬や憤怒を感じる人もいると思うがこれは7つの大罪である。正しい措置は認め、仲間に引き入れることである。
しばらく黙ってみていると彼のプレイが終わった。
彼はそそくさと荷物をまとめ何処かに行こうとしたので、僕はすぐに声をかけた。
「あのーすみません。僕、初心者なんですけどーちょっと教えてくれませんか?」
いかにも、息子にせがまれてしまいまして、というようなジェスチャーを交え、僕はキャラ付けし易い僕を演じた。欺瞞。これは7つの大罪ではない。正しい嘘が存在することを歴史は証明している。
彼は「あ、はあい」と言って僕の横についた。
揃った。後はゼラオラ、お前が僕の前に現れるだけだ。
最初のポケモンはニャビー?という猫のポケモンとアマージョという、なんだかよくわからないポケモンだった。
僕は筐体の「ガオーレディスクを入れてね」というメッセージで迷わずランダムポケモンを召喚することを選んだ。彼と話をしながらこれまでの経緯とゼラオラをゲットしたいという目的を告げた。
とりあえず簡単に1戦目を終え、アマージョをゲットした。きあいボーナスでは本気を出して連打した。
2戦目はワニのポケモンと火のハリネズミのようなポケモンだった。僕のランダムポケモンのフシギダネとイワークは比較的簡単にやっつけられてしまった。
あと3体までポケモンを召喚することができる。
僕は数秒待った。
横にいる彼が最適なポケモンを選択し、ガオーレディスクを持ち出してくれることを想定して。
「あ、よかったら使います?」
ニヤリ。
「あ、いいですか?すみません」
彼が選んでくれたポケモンは恐竜のようないかにも強いポケモンで、レア度を示す星が虹色に輝いていた。
先程までのランダムポケモンと比較すると攻撃に移るまでのウェイトタイムの減りが段違いに早かった。
また、攻撃も通常の攻撃ではなく、Zワザとかいうパワーアップ版であり、ワンパンで敵を粉砕した。
「す、すごいですね。レアポケモン」
「まぁ、そうですね。効果は抜群、でしたしね」
ガオーレディスクを排出したかったが、ポケモンがゲットできなかったため、気合いボーナスをつけることができなかった。
しかし、ここまでのプレイで僕のきあいは400オーバーになっており、十分ゼラオラが狙えると思われた。
そして、本番の3戦目、待ちに待ったゼラオラがついにその姿を現した。
「あー出ましたよ!!ゼラオラ!!」
「あ、本当ですね、頑張ってください」
ゼラオラは二足歩行の猫のような黄色のポケモンで見た目からはおそらく電気系のポケモンであると思われた。
ジワリと手が湿った。
しかし、あっさりと僕の心配は杞憂に終わった。
彼のでんせつポケモンが強すぎて2撃でポケモンを倒してしまったのだ。
ただ、ここからが本当の戦いである。
ポケモンをゲットするモンスターボールは恐らく4種類ある。ゲット率が低い順にモンスターボール、スーパーボール、ハイパーボール、マスターボール。最上位のマスターボールに限っては100%ゲット出来るようだ。
この4種類がルーレットのように回っており、ボタンを押すタイミングで何になるか決まる。
目押しができるのかは知らない。
僕は念のため、彼に尋ねた。
「これって目押しできるんですかね?」
「ある程度は。しましょうか」
そういうと彼はタンッと軽くボタンにタッチした。マスターボール。そうか、彼はやっぱり本物だ。
まさか、1ゲーム目でゼラオラがゲットできるとは思わなかった。ゼラオラのディスクが印刷されるまで僕の手は震えていた。
彼に何度もお礼を言った。彼は「じゃあ」と言って去っていた。せめてお名前だけでも、と言いたい気分だった。
周りを見渡すと僕以外に誰もいなかった。
僕は迷わず100円を入れた。
ここまでは甥っ子の溜息に報いるためだった。
しかし、ここから先は新米ポケモントレーナーの僕のためのバトルである。
かかってこい!最強のポケモン!
こうして、とある地方都市のイオンにまた1人、PTAなどに目を付けられそうな大人が生まれたとのことである。
●課金ガチ勢とは僕のことだ
あけおめです。
忘れてたので記事の振り返りをば。
なんだか今回のブロックはあんまり良くなかったなぁと思っててちょっと全体的にメタい構成が多くなってしまったように思います。
どれも書いてる時は本当に楽しかったんですが。
■20代の夫婦が高級外車を買った結果wwwww
結局なんの車種を買ったのか明確にしてないですが、論争を起こしたくなかったのであえてです。なんか車界隈の人たちは車種で揉めるらしいですよ。
書いてる時は充分だと思ってましたが読み返すと購入の描写がないので何を買ったのか、買わなかったのか、ほんと曖昧でわからないですよね。まぁ賢い読者の皆さんなら適当に補完してくれることでしょう(とか言ってみる)。
年末に前から乗ってるもう一台の方を買い換えたんですが、改めて思ったのは華美な車は本当に無駄だということ。確かに走り出しとか乗り心地とか見た目とかは確実に違うんですけどそれに3倍も4倍もの値段をかけるのはちょっとやりすぎ感あります。
だけど出迎え、送りがあるようなお店とかに行くとやっぱ対応が変わるのはあるので見栄を張りたい人は買う価値あると思います。でも本当にそれだけ。
少なくとも僕にとっては、なので、好きな人が欲しいと思うなら買っていいと思います。
まとめとかでよくある釣り系タイトルにしてみましたが、まぁどうなんでしょ。あんまり面白くないかな、と思ってます。
内容は価値観についてですね。
前に妻に「無人島に3つ自分の持ち物を持って行くとしたら何にする?」て質問した時、彼女は少し考えて「うーん、パンツかなー」と答えたんですよ。
そんな価値観の持ち主と一緒に生活できて僕は本当光栄です。
他の2つは?と聞いたら「パンツ。2枚ないと洗えないから」と言ったので、パンツという括りで複数枚持っていく体でもいいのに、すごく真面目なんだな、と驚いたと同時に、よく考えたら裸で入島しようとしている事実に気づいて愕然としましたよね。
価値観というのはそういうものです。
■暇を持て余した、男1人の遊び
これ、わかりました?
書き上げた当初は自分的に気に入ってたんですが、日を置いて読むと詰まらなくてびっくりしました。夢で見た内容って得てしてそういうものなのかもしれません。
これまでのブログの内容に少しリンクするように書いたので導入(フリ)はあまりせず、唐突にひっくり返そうとしたのがダメだったのかもしれません。
オチは第四の壁越え系です。
この後のハゲネタ第二弾でも冒頭にありますね。
個人的には嫌いではないけど、飛び道具感があるので控えめにしていこうと思ってます。
全然話は変わるんですがドキドキ文芸部という海外の開発者が作った日本のギャルゲー風のホラーゲームがあるのですが、これすごく面白いです。僕はユーチューブで見ましたが第四の壁越え系では今のところ1番面白いと思いました。序盤のギャルゲー部が退屈ですが、ホラー体験をしたい方は是非見てみて、いや、なんか無料っぽかったのでいろいろ調べずにプレイしてみてください(他力本願)。
■ハゲることについて僕たちが学ばねばならないこと
ハゲネタ第二弾です。
妻がスマホ見ながらケラケラ笑ってたので何かなーと思って聞いたら、前のハゲ記事を読んでました。好きらしくて何回か読んだみたいです。これはイケる、と思ってまた書いてみました。
やっぱり人によってはセンシティブな問題かもしれないので次は一見ハゲネタではないが、実はハゲネタ、というシークレットミッキーみたいなスタイルのハゲネタにしたいと思います。文中に隠れたハゲネタを探してみよう!みたいな。6割くらいは冗談です。いや、4割本気かよ、と書いてて思いました。
去年大ブレイクしたカメラを止めるな、の上田慎一郎監督は東京時代のリアルの友人なんですが、脚本の案を練ってる時にマジかよ、みたいなのを積極的に取り入れてたので、案外ありなのかもしれません。シークレットハッゲー。やってみましょうかね。
上田さんの話はまた別の機会を設けてやろうかなーと思ってます。が、こんな場末のブログで紹介されても上田さんがテレビで話すネタが減るだけなのでとりあえずやってないって感じです。一つだけ言うと彼は本当に面白い人なので世に出たのは必然だと思ってます。
■妻帯者でも青春ラブコメがしたいっ!
実はカウボーイビバップは多摩美のサークルで盛り上がって見たのが最初です。
色々話しだすと物語がブレるし、パチンコを出したのはアニメとの親和性が高いのとサラリーマンっぽいからです。すみません。
11月、12月は本当にアニメをよく見ました。
1番好きだったのはたまこラブストーリーていう映画アニメです。なんか続き物の映画版みたいですが前作は見てません。うん。これについては他にコメントがありません。楽しかったです。
記事の内容については妻オチが唐突なのでとってつけた感がありますが、このブロックの中ではこの記事が一番好きです。
作中に出てくる神こと、師匠こと、マブダチの同僚は別の形でまた登場してもらうつもりです。
■2018年大晦日の雑談
僕の後悔についての記事を書いていたんですがいつのまにか年末になってたので取り急ぎまとめとこれからの展望について書きました。
この中でも言ってる私小説は目下執筆中です。面白いと思うけどなー、どうなんでしょうか。
それを書いてて思ったのが僕はキャラを遊ばせるような会話劇が苦手ということで、とりあえず練習がてら会話のみの記事を別に書いてみようと思ってます。複数人いた時に会話だけで誰が話してるか判別させるのって難しくないです?みんなどうしてましたっけ?
来年の大晦日は今練ってるプロットや設定集を全部公開して、おそらく完結しているだろう物語とどこまで差があるか見比べるみたいなことをしてみたいなぁと思ってます。完結してれば。そう、それだけが不安です。
つい、今のことですが僕がフォートナイトに5万課金してたのが妻にバレました。めっちゃ怒ってるのでとりあえず誤魔化しましたがどうすればいいんでしょうか。ブログを介して謝罪します。すみません。その使途不明金、僕がやりました。
今年はゲームじゃなくてブログを頑張ります。でもここでゲームを辞めたら5万がただ無駄に終わるので細々とゲームもすることとします。今後は無課金(無理のない課金)に切り替えていこうかと思います。
2018年大晦日の雑談
さて、年の瀬ですね。ゆっくり過ごせているでしょうか。
僕は年末年始は仕事があるので休みは来年になってからです。お休み方はこの年末年始の貴重な時間を僕の分まで満喫してほしいな、と思います。お仕事の人は、逝くな、生きろ、とだけ伝えておきます。
2018年は僕個人的にはかなり充実した一年間でした。仕事もかなり順調ですし、実は音楽活動をしているんですが、そちらでも今年は大きな成果がありました。
例年以上に仲間と遊んだし、新しい仲間や趣味もできて、いや、なんかすみません。本当によかったことしかないです。父から「自分だけが幸せな話は他人に積極的に話すな」とか言われているので、あまり語らない方がよさそうです。まぁとにかくそれなりの一年でした(嘘)。
このブログについては6月くらいから再開して15、6記事くらい書いたでしょうか。いいペースとは言えないですね。
再開当初は少なくとも週に1回は書こうと思っていたのですが、結局、月に2回くらいしか上げてないですね。
これについては明確に原因があって、一つは前述の通り、私生活が充実しすぎていたことと、このブログに対して私情が混じってきたことです。
どういった私情かというと、自分自身の膿を出そうとしてしまったというか、シリアスな記事を書こうとしてしまった、というものです。
6月から再開して、何度か長期のブランクが発生して
いるのですが、この期間は生み苦しんでいました。
作成していた記事は一応の完成まで至っていますが、結局上げていません。
これじゃまずいということで取り急ぎ、楽しんで書いたものばかりがブログを独占し、結果この一年間(半年)で作成した記事のラインナップはなんか軟派で緩い感じのものになってしまいました。
まぁ、それも僕の一面なので自分的にはよしとしますが。
なぜシリアスを生めなかったのか、これは結局、今の僕が幸せだからなんです。他人から見てどう、とかじゃなくて自分自身の評価としての話です。何も悩んでいないし、問題がおきれば他人の協力を仰ぐという意味でも自分の働きかけで全て解決できる、全て丸く収まってしまうんです。
だから膿とか言うけど別にコンプレックスみたいなものはもう自分自身で納得して吸収して、もう僕を成立させる一部になってしまっているので、それをあえて誰かに向けて話しても迫ってこないんです。テーマが。
浅野いにお先生の多分、ソラニンだったかと思いますが、その中の台詞に「幸せになるのは難しいことじゃない」というものがありました。これはルサンチマンに苦しむ主人公に向けて(たしか)親が言う言葉で、行間を読むと「幸せになりたいだけなら諦めてしまえばいい。他の幸せもある」のような意味だったかと思います。あれ?「幸せは特別なものじゃない」だったかもしれません。やばみ。
まぁほぼ忘れてて説得力皆無ですが、この言葉に出会った当初、僕は驚いたんですよね。え、幸せってそうなん?と。
当時の僕はとにかく頑なに目標を達成することに意義と幸せを見出していたので、言葉の意味はわかるけど、心なし、「達成できなかったやつの言い訳なのでは?」とも思っていました。
今時点の僕の見解は、「志すことは100%必要。しかし目標の達成が目的になってはいけない」です。つまり、目標の達成は必ずしも幸せではありません。浅野いにお先生の言葉は正しかったと思います。
しかし、例えばタイムマシンが完成して、今の僕が過去の僕にこの件を伝えたとしても多分過去の僕は納得しないんです。確かに過去の僕もこの言葉にひっかかりはしたんですが、その真偽がついていませんでした。それは百聞は一見にしかず、みたいなもので、とにかく経験しないとわかならないと思います。
当時の僕は僕で精一杯で余裕がなくて達成に執着しないと足場が瓦解してしまうような事情もあったのだと思いますが。
話しが大きく戻るんですが、シリアス記事についてはそういう部分がありました。
僕はその話をすることで何をしたいのか、少なくとも僕と同じような状況にある人がいるなら救いにならなくても一助にはなればいい。そう思って書いていたんですが、読み返してみると圧倒的に足りないと感じました。そう、経験が、です。
いくら言葉で、論理で説明しても経験しないとわからないんです。
どうすればいいのか、この半年、方法を探っていたんですが、先日書いた「もしもあの頃に戻れたら」で光が見えました。
自分で言うとミサワっぽいですが、僕、結構忙しいのでブログはタバコを吸うときとか、移動中とかの空き時間にしか書きません。このせいで一旦下書きに残してちまちま途絶しながら書いているんですが、「もしもあの頃に戻れたら」はシリアスな内容なので嘘にならないよう、僕も当時の僕になりきって書いていました。完璧に幸せな日常の中に、不安定に揺れていた過去の僕が度々トレースされる、これがとても苦しかったんです。
そして完成したんですが、それからしばらく不安定なまま虚ろな日々を過ごしました。
村上春樹先生が読者の質問に答えるイベントが数年前にありましたが、確かそこで、「読書は必要ですか?」という問い対して「必要はないけど、物語は救いになる場合がある」というような答えを返されていました。
僕はそれを思い出して、あ、それだ、と納得しました。
物語で擬似的に経験してもらえれば真意が伝わるのではないか。
僕が過去の自分を追体験したようなことを物語によって補完できるのではないか。
と、いうようなことから2019年は私小説をやってみようと思います。中学と高校時代の荒削りで繊細で不完全な失敗と成功の物語を。
軽くプロットを練りましたが、多分20個くらいになると思うので1年を通してやります。
シリーズものですが、1話でテーマは完結させるつもりです。なのでどこから読んでもいいようにはしたいです。
あと、物語中の時系列とアップする順はバラバラにしようと思っています。
当たり前に手にしているそのものが実はとんでもないものだった、みたいな感じを演出したいです。
なので時系列はバラバラでもアップ順に読んで欲しいです。
詳しくは第一弾をあげる前にまた説明します。
ちょっと準備をしたいので2月頃を予定します。
あ、これまでの上辺を撫で回すような記事も引き続きやります。続き物と単発が混在するような形でいくつもりです。なのでタイトルとかで区別できるようにした方がいいですね。
2018年に作成した記事で僕が一番気に入っているのは「ハゲによるルックスの低下を防ぐ~」です。
単純にネタが面白いですよね。楽しみながら書けました。心残りは父から27歳でハゲ始めたことを聞いて、ロバートジョンソンの話までしたのに、なぜ「父の毛根はロックスターだった説」のオチを絡めなかったのか、ということです。兄ちゃんオチは読み返すとちょっと弱いかなーと思いました。
ハゲネタが楽しすぎて2作目まで書いちゃいました。てへぺろ。
多分3作目も近いと思います。
読んで欲しいのは「もしもあの頃に戻れたら」です。長いですが、苦しんで書いたので読んで欲しいです。僕のブログを楽しみにしてくれているリアルの友人がいるのですが、そいつに「隣の席に不美人~と、これどっちがよかった?」と聞いたら「もしもあの頃に戻れたら」と言ったので、手応えあったんですけどね。そいつ、あんまり本読まないらしいです。まぁ読書家層のウケを狙ったわけではないですが。
論理オチ系の記事は2019年も引き続き研究します。おもしろいものを作ってみせます。
2019年からはブログ用のツイッターを始めようと思っていましたが、ちょっと保留にします。
ストーリーものを根つめてやってみたいです。
それがひと段落したらツイッターもやるつもりなのでその際はよろしくお願いします。
とりあえずそんなところです。
この間テレビ見てたらやけに平成最後ってフレーズが押されててなんか僕も気が引き締まるような気がしたんですが、よくよく考えたら毎日、僕の命が最後である可能性もあるので、やっぱりいつでも心の炎は燃やしておくべきだと思い直しました。
情熱って一回冷めるとまた火を点けるのって大変なんですよね。
頑張ろうって思うと途端にやる気がなくなったりしますが、楽しもうと思ったら意外とできたりするので休みだからといって怠惰に過ごさず、せっかくの機会を楽しんで過ごしてください。
それではよいお年を。
妻帯者でも青春ラブコメがしたいっ!
先日、会社の同僚にふと、萌えについて尋ねたところ、「喧嘩したいんですか?」と返答があった。
もちろんそんなつもりはないので、なぜそんなことを言うのか、と尋ね返した。すると同僚は「僕の萌えは、綾波レイです」と答えた。
エヴァンゲリオンのヒロインの子だ。
藤原基央がこの子のためにアルエを書いたのとパチンコではSP前に出てくるとアツいということくらいしかしらない。
可愛くないし、貧乳だし、愛想悪いじゃないか。
はっ!?
「なるほど」
「ね?」
僕も気付いた。これは喧嘩になると。
「アニメとか見ます?」
同僚が僕に尋ねた。
「いや、僕は」
正直あまり見ない。大人になって見たのはカウボーイビバップと、化物語くらいなものだ。いずれもパチンコで知って興味を持ったものだ。だからこそ、昨今の萌えブームがどんなものか知りたかったのである。
「深いですよ。こちら側に来る覚悟はありますか?」
いやいや、何を言っているんだろうか。
同僚の顔がいつになく真剣だったので思わず笑ってしまった。
「アニメ初心者ですよね?なら、とりあえず青春ラブコメものをみた方が手っ取り早いかな、と思います」
ばかたれが。僕ぞ?青春ラブコメに悪感情はないまでも自分がはまり込むように思えなかった。ゾンビが蔓延する世の中で生死を賭けた青春ラブコメがあるなら、まだわかるが。
「ありますよ。ゾンビの青春ラブコメ」
「え?」
ゾンビが蔓延する世の中で生死を賭けて青春ラブコメする意味がわからない。
なるほど。深そうである。
その後、帰り際に同僚はオススメのアニメをいくつかメモに書いて渡してくれた。
帰宅後、Amazonプライムで視聴した。
結果から言うと最高だった。
世の男性の嗜みとして青春ラブコメを必修化すべきだとすら思った。
それから僕は持ち前の集中力で青春ラブコメを見狂った。2週間で30作品くらいは消費した。
同僚には感謝を伝えた。いや、もう同僚ではない。マブダチである。
「どうです?深淵、見えました?」
マブダチが僕に尋ねた。
正直に言うと、まだ見えていない。
最高に楽しかったが、底なしを感じることはなかった。
はっきり言ってどの作品も似たり寄ったりだと思った。
そもそも、青春ラブコメはすでにある程度のテンプレートがあり、茶髪の清純系幼馴染や、ピンクの髪のふんわり巨乳先輩のようなお決まりのキャラがいて、ほとんどの場合でメインヒロインと付き合うことになるし、各作品独自の楽しみといえばキャラのやり取りや設定による微妙な差くらいしかないのではないか、と思う。
僕の言葉をゆっくりと待つと、舐った(ねぶった)当たりのアイスの棒を口から差し出すように勝ち誇った顔でマブダチが言った。
「ではなぜそれが楽しめるんでしょうね?」
はぁっ!?
なるほど。これは古典落語のようなものか。
ほとんど同じようなストーリーでも演者の立ち振る舞いや、機微、パーソナリティを楽しむような、奥ゆかしい娯楽。
深い、深すぎる。
僕は膝をついて元マブダチの顔を見上げた。
そう、彼は。いや、このお方は師匠である。
僕が今進んでいる道をもう遥か昔に通り過ぎている。
「し、師匠、僕はこの先何を見ればいいんでしょうか?」
「そうですね。もう一回、同じ作品を見てみましょうか」
「同じ作品、ですか?」
師匠によると、もう一回見ることによって作品への理解が深まり、愛が芽生えるとのことである。
僕はもう師匠に逆らう気などなかった、が、見直しなどセンター試験でもしたことがないので、その気持ちだけはここに置いておこうと思った。
「時間の無駄なんではないでしょうか」
師匠は慈しみに満ちた優しい眼差しで微笑んでいた。
「急いては事を仕損じる。必ずわかります。気持ちを持って施った(おこなった※こんな読み方はしません)ことに無駄なんてありません。信じてください」
僕はさらに3日をかけて厳選した3作品の見直しを行った。
結果、僕の胸の中には愛が満ち溢れていた。青春ラブコメへの愛が。
僕は勇んで師匠の元に向かった。
この愛の行く末を教えて欲しかった。
「次は身近な人をキャラに置き換えて萌える練習をしましょう」
いや、師匠。それは流石にない。
僕は一瞬にして覚めた。
「残念だけど、僕はまだキャラのテンプレートを愛するには至ってないんだよね。萌えるってのもイマイチわかってないし。可愛いなぁ、みたいな感じはあるんだけど、それって絵も込みで可愛いなぁ、だし、現実の人をキャラクターに当てはめるとか、そういうのじゃないんだよね」
「そうですか。どんなキャラが可愛いと思いました?」
それは、やっぱり、ピンク髪のゆるふわ巨乳先輩系のキャラだ。幼馴染系も、まぁ好きだが1番ではない。絶対にないのは、ボーイッシュ系。メガネっ娘、年下の背の低い系も好きではない。
「やはり、ですか。じゃあ自分が青春ラブコメの主人公になったとしてメインヒロインになる子はどんな子だと思います?」
師匠は不思議なことを言う。
ついさっき好みのタイプを言ったではないか。
「え?それはやっぱり」
「考えてみてください。青春ラブコメのテンプレストーリーの中で紆余曲折あって最終的にくっつくメインヒロイン。果たしてそれはゆるふわ巨乳先輩ですかね?」
なるほど。確かに。
僕は好みのタイプの子にはガンガン行くし、どちらかというと自分に向けられる好意には敏感な方なので、ゆるふわ巨乳先輩が第1回から僕のことを好きだとすると、1クール持たない。多分初回で付き合ってしまう。
それだと僕が思う青春ラブコメではない。
理想は7回くらいまでに紆余曲折ありながら、ヒロインと付き合うことになり、第8回はラブラブ回、第9回でそれまで初回から存在を匂わせまくった親から決められた僕の許嫁が現れ、嫉妬に狂ったヒロインと不仲になるのがいい。そして第10回で2人の亀裂は決定的になり、11回でも距離は縮まらず、迫ってくる卒業式。残す2回。2人はどうなってしまうのか。
初回の僕の猛烈アタックを切り抜け、7回まで引き伸ばしてくれる辛辣さ、しかし、離れてしまった第10回以降も一途に僕の事を好きでいてくれる芯の強さ。これらを兼ねるキャラとは。
「ツ、ツンデレ、ですか?師匠」
師匠の方を見ようとするが眩しくて顔が見えない。指している。後光が。
「そうです。私が知る限り奥さん、そんなタイプですよね?」
僕は元師匠の顔を拝むことを諦めて、心のままに平伏した。そう、このお方を師匠と呼ぶのは恐れ多い。正しくは人の形をした神である。
「萌えとは何か?あなたが聞きましたね。さぁもうこれで答えが出たでしょう。私が出来るのはここまでです」
家に帰ると妻が夕飯の準備をしていた。
僕はドキドキしていた。
ラストである第13回。卒業式の後、2人はお互いの想いを伝え合って復縁したのだ。そしてその物語の続きに今、僕はいる。
「ねぇ、わかったんだけど、もしかしたら僕、ツンデレ萌えかもしれない」
僕は開口一番に伝えた。
「え?なにそれ」
そうだ。間違いない。僕はツンデレ萌えだ。
思えばアニメを見ていてもツンデレキャラだけは目に入っていなかった。なんというか、もう家族みたいなものというか。貧乏性を発揮して、どうせならあんまり知らないキャラクターを見よう、見ようとしていたのかもしれない。
考えてみたら完全にテンプレにはまったような見事なツンデレなのだ。うちの妻は。
僕は妻への愛の理由を再確認した。
僕は彼女の細い輪郭に手を伸ばした。そう、彼女は僕の妻である。
「ねぇ、今晩さ」
その後、メチャクチャ拒否された。
ハゲることについて僕たちが学ばなければならない事
タンポポの綿毛を想像して欲しい。
まだ風に吹かれていない、ふっわふわの白くて丸いあれだ。
それを人の頭ほどの大きさに拡大して欲しい。
準備出来次第、次は嫌いな人のことを思い浮かべて欲しい。
そいつの顔、声、言動、むかついたこと、それらに踏みにじられた自分自身を思い出して欲しい。
そしてその流れで、大きな、それは大きなため息をついて欲しい。
するとどうだろう。目の前のタンポポの2/3ほどの綿毛が花弁からはずれてふわり、ふわりと流されていったことと思う。
次に右を見て欲しい。
特に何もないかもしれないがとりあえずそれでいい。
左側から誰かに名前を呼ばれて欲しい。
もちろんそちらに顔を向けると思うので右から左に振り向くまでに唇を尖らせて一息に息を吹いて欲しい。
大丈夫だ。準備する必要はない。特に意識しない状態で、肺の中にあった息を細く吹き出してもらえばよい。
すると、タンポポはほぼ丸裸になっているのではないだろうか。
色味やつくりの違いはあると思うが、完成したそれこそが僕の父の頭髪のシルエットである。
以前も言及したことがあるが、僕の父は薄毛である。
が、つるつるではなく、タンポポの綿毛程の細く、繊細な毛が、空気を多く含んだような状態でファッサッと頭に乗っているイメージで、本人としてはスプレーなどの文明の利器を用いて一応の形を作るため、体裁自体は整えている様な雰囲気を出すのだが、中身はほぼ空気のみで構成されていることが一目両全であるため、先に骨組みだけを組み立てた従来工法の民家がそのまま20年放置されて野ざらしになったような寂しさを漂わせている。
僕が父を父として認識した時から多少の密度の違いはあれど、だいたいそのままで現在に至っている。
小さい頃に見ていた彼の朝の準備の様子は5~10本ほどの毛束をまとめては組み立て、一定の盛り上がりを作るような綿密な作業であったため、本人としても自覚があり、コンプレックスは感じているものと思うが、あのぐらいの年代のおっさんは無駄にイキってくるのでまるで自分がハゲていないようなオーラで他人の頭髪の状況にコメントしてくることがある。
「あのハゲ方はやばいな」
お前もな、待ちであってほしいが隣の父を見ると、警察官を退職後に私立探偵を始めた老齢の紳士のような顔で、他人の毛穴の死亡を確認しようとしているので、人間というのは自身の願望で簡単に認知が歪むものなんだなぁと気づかされる。
僕以外の人前でこれに類する発言をしないように父には強く言い置いている。
さて、ハゲ方にはいくつかのパターンがあるように思う。前から強く風に吹かれるか、上から滝に打たれるか、男性型薄毛の場合は大体そんなものじゃないだろうか。
その中からさらに残った木々の太さと生えている間隔がどうかというような問題がある。
我が父の遺伝子の場合、前から吹かれ、木は細く疎らである。
自ら率先してハゲたいとは思わないが、どうせハゲるならこの方が助かる。
前にも書いたが僕はハゲたら髷(マゲ)を結うつもりなので都合がいいし、下手に残った毛が元気だと残念で仕方ないからだ。というか元気な場合、心残りが酷くて横髪を伸ばして上に被せるかも知れない。ああ、そうか。こうしてバーコード型が生まれるのか。
僕と父は一時期、毎日一緒に飲み歩いていたので、その中で何度か髷を結うことを提案したことがある。父によると結うまでの過程で必ず落ち武者時代が発生してしまうことだけが気がかりで、それ以外は案外乗り気だった。もし街で髷を結ったおじさんを見かけた場合、僕の父か、若ければ僕であるの可能性があるのでその時はよろしく伝えてほしい。
髷以外にも父には何度かカツラの着用を提案したことがある。父くらいあからさまにハゲていて、よくそれをネタにもするお茶目な性格なので、周りも案外、「あ、お被りなされ始めたんだ」くらいの反応しかしないと思うからだ。
だが父は、髷の時の好感触と打って変わって全身からミサイルの発射口を開くような戦闘態勢になり、頑なに拒否した。
カツラというワードがまずかったのかも知れない。ならば植毛はどうだろう。
森、というものは自然に木々が生えている様を言うらしい。父のそれはもう遥か太古の時代に森だった場所というだけで今はタンポポが1~2本生えているだけの荒涼とした岩地だ。
林、というのは人間が管理して木々が生えている様を言うらしい。岩場耕し、もう一度木々を植える。かつての森が林になるだけでそこに木があるということに違いはないではないか。
そう、僕は父に説明した。
すると、父は言った。
タンポポはどうなる?遥か昔からその場所に咲いていたそのタンポポは。嵐が吹いても森林伐採の憂き目にあっても、彼らだけはその場所でじっと堪えていたんだ。それを俺の手で摘むことなんてできない。今は彼らの場所なんだ。そっとしといてあげてくれ。
なるほど。そういうことなのか。
僕は乱暴に合理性を主張していただけで、タンポポを慈しむ、美しい心を忘れていた。もうそれ以上返す手がなかった。
まぁ、よく考えたら全て例えばの話でそこには可愛いタンポポなど生えておらずヒョロンとしたおじさんの細い毛があるだけなのだが。
父の頭の上でふわふわしている埃のような毛は父の中では誇りだった、ということなのだろう。
僕はまだ一線を越えたことがないのでその先は大体同じような景色なのだとばかり思っていたが、一線越えてからもどうも色々とあるらしい。
僕もまだまだ学ぶことがたくさんあるのだ。
暇を持て余した、男1人の遊び
ある日、僕は暇を持て余していた。
妻は外出をして家におらず、予定もなく、大したやる気もなかった。しかし、休みを寝てすごすのはもったいなさすぎるというぼんやりとした概念だけが宙空に漂っており、僕はそれを潰すようにぽちぽちとコントローラーのボタンを押していた。
無駄に大きいプラズマテレビの画面は、全くその性能を活かすことなく、数年以上前のマジックザギャザリングのゲームを表示していた。
オンラインをするにももうプレイヤーがいなくなってしまったので 、CPUとの予定調和なつまらないやり取りをしているだけだ。CPUのドレイクトークンが必死に攻撃をしかけてくるが、盤面に濃霧の壁がある限り、僕に攻撃は通らない。無意味な攻撃のアニメーションを見ていると海底の底から上を見上げてポコポコと泡を吐いているような途方も無い気持ちになった。
僕はコントローラを置いて、ソファに横になった。
何か大それたことを考えよう。
楽しくなくてもいい。とにかく大それた状況に自分が置かれたとしてそこからどうやってそれを解決するのか想像してみよう。
と、すると、よくない状況の方がいいのではないだろうか。
いつか、なんかの漫画家が「物語は考えうる限り最も悪い状況に展開させています」と語っていた。その方が読者としては面白いことになるらしい 。
では考えてみよう。今この状況で最も悪い展開は何か。
このまま、妻が帰ってくるまで暇で、気付いたら寝てしまっていることだ。
「まずいっ」
僕は上半身を起こした。
これは臭うぞ。
そうなる予感がする。何かしなければ。
僕は部屋の中を見渡した。
音はない。いつも通り整頓された、可も不可もない状態だ。
掃除?
家事をすれば帰ってきた妻は喜ぶかもしれない。
手の込んだ晩御飯を作ってみてはどうだろうか。
僕は立ち上がって冷蔵庫を開いた。半分になったたまねぎとビール 、その他適当な食材が並んでいた。僕はすぐに冷蔵庫を閉じて思い出した。
違うのだ。僕はやる気がないのだ。
食事を用意するというような意識の高い大人ではない。
今の僕においてはそれさえもハードルが高い。ましてや妻の機嫌をとろうなど、聖人の考えだ。食事を作るくらいなら空腹で死んだ方がまし、とまで言える心持ちのはずだ。
また僕はソファに横になった。
いや、違う。僕は確かにやる気はないが、それほどやさぐれた気持ちではなかったはず。とにかくやるべきことが見つかればそれに集中できるはずだ。
何かを考えてみよう。
例えばこの状況でゾンビパンデミックが起きたら僕はどうするだろう。
まずは妻に電話をする。携帯はつながるだろうか。妻と連絡が取れたなら妻を迎えに行こう。道中なにかあってはいけないので武器が必要だ。包丁はだめだ。リーチが短いし、柔らかい腹部を刺してもゾンビには効かない。しかし、見た目が与える印象はかなり強い。包丁を持って街を歩くと正常者から無意味な攻撃や警戒を受ける可能性がある。できればゾンビの脳幹にダメージを与えられるもので、かつ、見た目の印象が悪くないものがいい。バールか?しかし 、うちにはない。思えばうちに武器らしい武器はない。
と、すると、できるだけ不慮の事故が起こらないように防御を固めて、足早に逃げてしまえばいいのではないか。冬服を着込んでサバゲーで使ったフェイスマスクを使おう。フェイスマスクが自然か否かはこの際問題ではない。
と、いうか設定が甘くないか?僕はこの状況でどうやってゾンビパンデミックに気付くんだ?隣の家の人がわかりやすく暴れだしたりとかそういうことだろうか。
だとすると僕は妻より先に警察に連絡する。
と、いうかパンデミックなんか起きなくないか。噛まれることで感染するんだろう?感染スピードが遅すぎる。同時多発的に各地で起きる理由がない。ちょっとしたパニックになったとしても情報化社会の現代ではすぐに鎮圧されてしまうだろう。
だめだ。現実的じゃなさ過ぎる。まったくつまならない。
僕は目を閉じた。
僕を最悪の状況に巻き込むとするなら。
奇想天外である方がいい。僕がまだ知らない未知の出来事を。
スナイパーはどうだろう。
僕はこの部屋で寝転んでいるが実はスナイパーに狙われている。現実的ではない。しかし、それに重みを持たせるためには?
おそらく病気だ。僕は精神的におかしくなってしまっているのだ。空想上のスナイパーを怖がって引きこもってしまったのだ。
この設定、何か面白みはあるのか?例えば映画であればどうする?ここからどう転ばせたら面白くなる?おそらく視聴者は早い段階で主人公の病気を想定するだろう。一般人がスナイパーに命を狙われるのは現実的ではないからだ。だとすると、何かどうしようもない設定を盛り込むか?マフィアの金を持ち逃げしたとか、革命家であるとか、だろうか。
「違う」
こういう設定とかメタい話ではない。僕は最初から設定を設定であることを忘れて、その世界に入り込んで最悪の状況を乗り越えたいのだ。
未知の出来事は難しい。設定を練らなければいけないので物語の扉の先で一登場人物になりきることができない。
僕は目を閉じたまま深く呼吸をした。
いい。もういい。綺麗な景色を思い浮かべよう。僕が美しいと思うものは何か?星が浮かんだ夜空だ。多分、空気は冷たい。おそらく凍えるほどに。だけど僕はそれを心地よく感じている。そうか、ぼくはかなりの防寒をしているのだろう。そう、長い距離を歩いてここにたどり着いた。火照った顔を夜風で冷ましている。そして、厚い雪の層の上に倒れこんで、空を見上げているのだ。
吐く息がシャリシャリと微かな音を立てて地に落ちていく。
そんな経験したことがない。南極なのか北極なのか、ここがどこかは知らないが、多分それに近しい地の果てのどこかだ。
もしかしたら死ぬのかもしれない。だけど嫌な気はしない。達成感が心を満たしている。
力が抜けている。おそらくこの人生の中で1番リラックスしている。
星空がこんなにも綺麗だと思ったのはいつぶりだろうか。小さい頃に家族で行ったどこかの高い山から見た星も綺麗だった。
だけど違う。
僕にとって1番綺麗だと感じた夜空は雪が降った後の東京の夜だ。
あの頃はまだ貧乏でプレッシャーから押しつぶされそうで、誰も味方がいなくて、地元から一緒に上京したあの子だけが僕を信じてくれていた。
まだ誰も歩いていない雪道を2人で手を繋いで歩いた。あの時の星はどんよりとしていてお世辞にも美しいとは言えないけれども確かに輝いていた。
あの子は元気にしているだろうか。
気が強くて料理が下手な子だった。
だけど1番辛かったあの時期を彼女は確かに導いてくれていた。本当に心が繋がることができた女性はあの子だけかもしれない。
あの子には酷いことをしてしまった。
成功に浮かれていたんだ。
独りよがりのナルシズムではあるのかも知れないが、あの子が今、幸せでいるか心残りだ。
だけどもう、それを知ることは今の僕には出来ない。
そうだ。もしもあの時、僕があの子と別れていなかったら何をしているだろうか。その先をイメージしてみよう。
きっと日本にいて、地元に帰って似合わないスーツを着てサラリーマンなんかをしている。おそらく尻に敷かれて財布の中身まで管理されているんだろう。
子供はいるだろうか。わからない。居てくれたら楽しいが。ただ、まぁそうじゃなくてもきっと楽しく過ごしているだろう。
そうだ。あの子と過ごしていたかも知れない未来を物語にしてみよう。夢に敗れたサラリーマンの僕があの子と過ごす何気ない毎日を綴るブログにしよう。もしかしたらあの子が読むかも知れない。
タイトルに本を絡めよう。あの子は気付くだろうか。あの瞬間を思い出してくれるだろうか。
僕が本を読んでいるとあの子がいつも部屋の蛍光灯をつけてくれた。僕は気づかなかったんだ。夕方を過ぎて、薄暗い部屋に。それほど読書に集中していた。
あの子が僕に声をかけて、やっと時間が動き出す感じ。あれを書いてみよう。
妻にバレないように、僕は想像の中でもう一つの結婚生活をおくろう。ブログを書いている時だけは設定であることを忘れて、一庶民として、物語の中の主人公として生きよう。
そのブログのタイトルは「午後、6畳の部屋は薄暗く、僕はソファに本を置く」にしよう。
「寝てるの?」
気づくと妻が帰ってきていた。僕はソファで寝てしまっていたようだ。
「ちょっと待って。悪いけど今話しかけないでもらえるかな」
僕は慌ててスマホを探した。
さっき夢うつつの中で見たものをとにかく文字にして残したい。とっても面白いアイディアだ。後から見直したら別にそうでもないのかも知れないが、現時点ではかなりの手応えを感じた。
現実を自分が考えた設定であると思い込んでしまう男の話。
「は?何その言い方」
妻が怒っていた。やらかした。
「あーごめん。今面白い事考えたから記録しておきたかったの。すごくややこしい話だからどうすればいいか結びを練りたくて」
「いや、意味わかんないし」
「うん、ごめん」
妻は肩を竦めて、まるで外国人がするような大げさなジェスチャーをした。もうこの話はおしまい、という意味だ。
そう、もうこの話は終わりだ。
何が事実か、曖昧なまま終わらせてしまおう。
意味がわからない?
なら、ヒントをあげよう。
意味などない。これは遊びだ。